心待ちにしている季節、秋。
だけどもだけど、今年の残暑はなかなか手強く、まるで夏がもう一度本気を出しているかのようですね。
先日、初めて訪れたロピアで秋の味覚を探していたら、さんまが目に留まりました。安売りされて10本入りと量も多い。売り場の照明がギラギラと照り返す中、光を浴びてキラリと輝くさんまを見てふと昔を思い出しました。
子どもの頃、さんまは特別高価な魚ではなかったわけで、毎年秋になると母がたくさん買い込んでくる季節の定番でした。
特に楽しみにしていたのは、母が圧力鍋で作るさんまの梅煮。鍋の中でじっくりと煮込まれるさんま。圧力鍋から「しゅっしゅっ」と心地よい蒸気の音。それは、日も短くなった静かな夕暮れ時に響く、小さな安心感の音でした。家の中でその音を聞きながら、食卓に並ぶ料理への期待が一層高まっていったものです。
縁側には、さんまのみりん干しが物干し竿に吊るされ、隣には干し柿が揺れていて、私は柿の皮むきを手伝いながら、それを縁側に並べて干す。その光景は今でも目に浮かびます。冬になると、百舌鳥が飛んできて干し柿をつついていたのも懐かしい思い出。
そして、食卓にはいつも母が大切にしていた言葉
「今日は新米だよ。農家さんが一粒一粒心を込めて育てたお米だから、残さず食べるんだよ。」
つややかに輝く新米とともに頬張る、さんまの梅煮。その絶妙な甘みと酸味、そして秋の豊かさを感じる味わいは、今でも私の心に刻まれています。圧力鍋の蒸気の音とともに蘇るあの味を、決して忘れません。