さて前回↑は、地震対策は堅くするだけの「耐震」だけでは防げない。堅いだけだと「衝撃」を直に受けてしまうんだよ、というお話でした。
はい。力をいなして受け止める大事さがよく分かりました。
今回は、建物の揺れと大きく関わる「共振」という現象についてお話したいんです。
きょうしん…?またまたちょっと難しそうですね…
ぜんぜん難しくないんです。
スーツさんはブランコをこぐとき、力を加えるタイミングを調節することでブランコを大きく揺らすことができますか?
はい。それは子供のころ経験したことがありますし、今も体が覚えていて出来ると思います。
これは、ブランコにはブランコの固有周期というものがあり、私たちがブランコをこぐとき、自然とタイミングをこの固有周期に合わせてこいでいるのです。
へ~。そうだったんですね。
はい。そのように、振動する物体が外部の振動と同期してさらに大きく振動することを「共振」といいます。
なるほど。それが今回のテーマなんですね。
実は建物には固有周期というものが存在しており、地震の揺れの周期と一致すると建物はかなり大きく揺れるんです。
建物の固有の周期…
わかりやすく模型を使った動画で説明しますね。
左から耐震レベル1、2、3で見ていただいても良いですし、①弱い家、②普通の家、③強い家として見ていただいても良いですし、①昭和56年以前の建物、②現在の建物、③長期優良住宅で見ていただいても大丈夫です。
つまり、柱が1本から3本に増えるにつれて堅くなるわけですね。
はい。では今からこれらの躯体を私が地震力となって揺らします。
ではどれが一番揺れるでしょうか!?
うーん、①番…?
じゃあちょっと揺らしてみましょう。①番が揺れていますね。ただこれ、私が①番を共振させているに過ぎないんですよ。ブランコを強くこぐときの要領と同じです。
えっ、あっ!
ではこの揺れの周期を早くしていくとどうなるかというと、、②番が揺れます。もっと早くするとどうなるか。③番が揺れます。これが共振という現象なんです。
なるほど…どれを揺らすかは揺れの早さ加減でカンタンに切り替えられていますね。
そうなんです。繰り返しますが家は一軒一軒、固有周期というものを持っています。
地震の揺れも周期というものがあって、ゆっくりの揺れとか小刻みで早い揺れとかいろいろあるんですけど、この建物一軒一軒の固有周期と地震の周期が一致してしまうと、柔らかく作られていようが堅く作られていようが大きく揺れてしまう、という現象なんです。
う~ん…
ところで、阪神大震災は11秒間に対して東日本大震災は110秒間だったので10倍くらい長かったんです。にも関わらず倒壊した家は阪神大震災のほうが多かったんです。
確かに、そういわれてみると阪神大震災のほうが多く倒壊したイメージはなんとなくあります。
実際、阪神大震災は共振が起こったのではないかと言われています。ヘルツという、1秒間に何回揺れるかというものがあって、これの3ヘルツというものが木造住宅が非常に共振しやすいポイントだったんですね。その揺れが阪神大震災のときに起こったといわれています。たった11秒間の揺れで。
へ~。
東日本大震災のときはそれよりもっと大きい8ヘルツの周波だったので木造住宅にあまり影響ない揺れだったといわれています。
なるほど。だから110秒揺れても影響が少なかった。。
そうです。まとめると、同じ震度7でも建物の固有周期と揺れの周期が全然違うことによって、阪神大震災は3ヘルツで倒壊が多く、東日本大震災は8ヘルツで少なかったといわれています。
つまり、起きた地震が建物と共振しやすい周期だったら、震度の大きさにかかわらず激しく損傷する可能性があるということですか?
その通りです。結構いろいろな実験で「震度7に20回以上耐えた家」とかをよくやってたりするんですけど、やり方によっては20回与えようが30回だろうが影響ない周期があるし、やろうと思えば1回で倒せるし、倒さないようにしようと思えば安全な周期の揺れを与えれば大丈夫なんです。
知らなかったです。震度しか気にしていなかったけど、揺れの早さで影響が出る出ないという話は初めて聞きました。
では、この共振というものが制振ダンパーで抑えられるものなのか?ということなんですけど…
はい。抑えられるんじゃないんですか?
実は世に存在する制振ダンパーの9割以上は共振を抑えられません。
えーっ!!
次回は、そもそも世に存在する制振ダンパーってどんな種類があるの?というお話をしますね。
よろしくお願いします!